クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
見ていれば分かる。
日中の作業も、勘定を締めるための作業も、広田さんと北岡さんの負担が大きい。
きっと、要領がよくて手が早いからなんだろうし、仕事の配分に口出しする気はない。
でも、仕事量で広田さんに助けてもらっておきながら〝自分の仕事が終わったのに手伝いもしないとかひどくない?〟なんて文句を言う他の女性職員は、仕事配分の差に、気付いていないんだろうか。
広田さんが何も言わずに黙っているからこそ、私のほうがムカムカしてきてしまう。
「毎日顔を合わせる以上、関係をこじらせたりするのは、私もどうかと思いますし、私は部外者ですからなにも言えませんけど。腹立たしいです」
ムッと口を尖らせながら言うと、広田さんは私をじっと見て……それから、笑った。
……笑った。
「瀬名さんって、大人しそうに見えるのに案外感情的なのね」
苦笑され、あまりの珍しさに目をパチパチとしながら答える。
「……よく言われます」
私があまりに驚いたからか。
広田さんはハッとした様子で、真顔に戻る。
そして、補填作業したことを示す印字をしてから「そうだ」と話しかけてきた。
「今日の送迎会、私は行けないから」
送迎会の席は、歓迎会同様、支店長が設けてくれたらしい。
支店長のおごりだからと、出席する職員が結構いるって話だった。
でも、やっぱり、というか……広田さんはこないのか。
「そうですか……。残念です」
「私、どういう趣旨の飲み会も顔出さないの。そういう場が好きじゃないし、周りに気を遣わせるのも嫌いだし。
だから……別に、瀬名さんの送迎会だからとか、そういうわけじゃないから」
誤解しないでほしいってことなんだろう。
少し言いづらそうに話す広田さんに、目を細めた。