クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「広田のこと、あーだこーだ言ってるけど、一人前の仕事できるようになってから言えよ。広田におんぶに抱っこ状態なくせに文句だけ言ってんのは、さすがに見るに耐えない」
ショックを受けたのか、顔を赤くし俯いてしまった星さんに、それまで黙っていた吉川課長が口を開く。
「八坂くん」
真面目な声色で八坂さんを呼ぶ課長に、星さんがバッと顔をあげる。
希望を浮かべているように見える瞳を見ると、課長が庇ってくれる……と思っているみたいだった。
「俺が言わなきゃならないことを、全部言わせてしまって申し訳ない」
だけど、課長が言った言葉に、再び眉を寄せ俯く。
そんな星さんに、課長が向き合うように立ち直る。
「星さん、今八坂くんに言われたことの内容は、理解できた?」
わかっていたとしても、素直には頷けない星さんを見ながら課長が言う。
「女同士のことは俺にはわからないし、色々事情もあるんだろう。でも、ここは職場だ。私情を持ち込むべきじゃない。
仕事ができる広田さんに、星さんが習うのは当たり前のことだよ。それを、嫌いだから苦手だからなんていう幼稚な理由で嫌がるなんてことは、社会人としてするべきじゃないし、思っても口に出すべきじゃない」
カッと、星さんの顔が赤くなる。
恥ずかしいことをしたという自覚はあるみたいで、そこに少し安心する。
注意されても気付けないなら、本当に改善の余地がないから。
「簡単なことじゃないかもしれないが、そういう態度は改善してほしい」
ハッキリと言った課長が「理解してもらえたかな」と聞くと、しばらくしてから星さんがうなづく。
なんだか納得いっていない顔だったけれど、そこは仕方ないんだろう。
プライドが高そうだし。
星さんがうなづいたのを見てホッとしたように顔を緩めた課長が笑う。