クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「部活が忙しくて。学年も違ったので、すれ違った……というか、そんな感じです」
「部活が忙しかったのって、瀬名さんのほう? 相手は部活を優先する瀬名さんに嫌気が差したとか、そんな感じですか?」
そう、楽しそうに聞いてくる北岡さんに悪気はない。
誰も、その恋を未だに引きずってるなんて考えないだろうし。
だから、仕方ないんだけど……。
『嫌気が差した』って言葉に、心臓を一突きされたようなダメージを受けてしまう。
「そうかもしれないですね……。優しい人だから、そんなハッキリ口にはしなかったけど。たぶん、そういうことなんだと思います」
「へぇ。でも、だとしたら随分、小さい男ですね。部活一生懸命する彼女を応援もできないなんて」
「実際はあんなデカいのに」とボソッと言う倉沢さんに、北岡さんから見えない角度で肘打ちを入れる。
倉沢さんは、くぐもった声を出してから、笑みを浮かべた。
「まぁ、高校生なんてただのガキだし。気持ちが大きいほど、自分以外に熱心になられたらダメージ受けちゃうもんじゃないですか」
「言ってる意味はわかるけど……あー、でもそんなもんかもね」
私が肘打ちしたからか、わかりやすく八坂さんのフォローを入れた倉沢さんに、北岡さんが同意する。
これ以上は心臓に悪い。
「それより」と話題を変える。
「広田さん、飲み会の場にはあまり来ないんですか? 苦手だって聞きましたけど」
北岡さんは「あー、ですね」とうなづいた。
「年に二度、ボーナス商戦前に決起集会っていう飲み会があるんですけど、それくらいしか出ないですね。
まぁでも、飲み会なんて出ようが出まいが個々の自由ですし」
「そうですね」
「んー、でも、正直、今日は来てもよかったんじゃないかなって思いますけどね。仕事の役割だとしても、瀬名さんに一番お世話になったのは広田さんなわけですし」
言いながらビールを飲む北岡さんに笑顔を向ける。