クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「全部、私だったんですか? ガツガツこない方がいいとか、慎ましくあるべきだとか、そういうの、全部……」
私がそれに当てはまるとは思えないけど……と思いながらも聞くと、八坂さんが答える。
そこにはもう、さっきまでの不貞腐れたような歪な瞳はなかった。
諦めたのか、落ち着いた表情が浮かんでいる。
「まぁ、めぐなら、そこにあてはまんなくてもどっちでもいいけど」
「本当に、全部私……?」
「ん。そう」
短く言われ、また少し涙が浮かび、八坂さんの顔が揺れる。
それでも、目を逸らしたくなくてじっと見上げてると、八坂さんがふっと笑った。
そして、涙目の私を見つめてから、それを少しだけツラそうに歪める。
再び頬にあてられた手が、優しく撫でた。
「なぁ。まだ、俺のこと好きだろ?」
なんて、自意識過剰な言葉だろう。
七年ぶりに会ったっていうのに、なんでそう思えるんだろう。
まったく……と思いながらも笑うと、八坂さんが続ける。
「好きじゃないなら、今すぐ好きになれよ。言い寄られてるヤツいるなら、断ってこい。倉沢とかはとくに強めに断ってこい。もう二度と立ち上がれないくらいが丁度いい」
「……勝手すぎませんか」
「俺はもとから勝手なんだよ。知ってんだろ」
はっと、なにを今さらとでも言いたそうに笑う八坂さんに、クスクスと笑う。
そんな私の頬をすりっと撫でてから、八坂さんが言う。
真面目な顔だった。