クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「おまえは、連絡よこさなかったとか言うけど。だって、カッコ悪いだろ。俺から音を上げて、おまえにあんな顔させたくせに、やっぱり好きだからって俺から連絡したりするとか……どんな自己中だよ」
「自己中じゃないですか」と言うと、「うるせぇ」とすぐさま言われる。
電車がゴトゴトと音を立てて走っていくのを遠くに聞きながら八坂さんが続ける。
「おまえが真剣にマネージャーやってんの知ってたし、それは俺がバスケに必死になるのと同じだって知ってたのに……あんなカッコ悪いこと言って、おまえ傷つけて。なのに、手なんか伸ばせないだろ」
わずかに眉を寄せ、苦しそうに言う八坂さんをじっと見つめる。
街灯が少ない、夜の公園。
人の気配はしなくて、まるでふたりきりの世界みたいに感じた。
「……だから、あのとき、電話に出てくれなかったんですか?」
別れたあと、耐え切れずにかけた電話に八坂さんは出なかった。
それを言うと、八坂さんは「そう」と頷いた。
「ヨリ戻したって、どうせ俺はまた同じようなこと言ってめぐを苦しませるのがわかってたから。間違ってるのは俺なのに、おまえを板挟みにして悩ませるのは嫌だった。だから、別れたほうがいいと思った。……あの時は」
「〝あの時は〟……?」
まるで、そのあと意見が変わったような言い方が気になって聞く。
八坂さんは言いづらそうに視線を落とし、ボソボソと言う。
「めぐが部活引退したら、また口説き落とせばいいって簡単に思ってた。今考えると、そう思うことで、そん時のツラさから逃げてたんだろうけど」
「でも、私が引退したって八坂さんは連絡してこなかったですよね?」
部活を引退してしばらく経ったとき、八坂さんのことが頭をよぎった。
今また八坂さんと関係をスタートできたら、今度は違う結果になるんじゃないかっていう希望をぼんやり思ったりもした。
でも……また無視されたらと思うと、怖くて手が伸ばせなかったけれど。
そのときの気持ちを思い出しながら聞いた私に、八坂さんが口を開く。