クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「怖くなったんだよ。時間空けたら。あんな勝手に別れを切り出した俺を、めぐがまた好きになるわけないんじゃねーかとか、拒絶されたらとか……考えて、怖くなった」

まるで、私の考えていたことをなぞるような答えに驚く。

八坂さんでも怖かったりするのか……って考えて、同時にその考えに笑いそうになった。
私は、本当に八坂さんを買い被りすぎてたんだなって。

八坂さんは、バスケは飛び抜けて上手かったけれど、それ以外は普通の男子高生だった。
独占欲があって、嫉妬だってして、構ってほしいけどカッコ悪いからっていう理由で言葉にできない。

なんでもできるわけじゃない。
それなのに……あの頃はそんなこと、考えもしなかった。

『めぐは俺のモンだって、言って』

八坂さんは、言葉で教えてくれていたのに、そんなわけないって決めつけて気付こうともしなかった。

私の気持ちが変わったかもしれないことを恐れて連絡をためらうなんて……思いもしなかった。

知らず知らずに完璧を求めてしまっていたのかもしれないと思い、申し訳なさで胸のなかがいっぱいになる。

「めぐと別れてから、付き合ったヤツも何人かいた。でもダメだった。おまえより、いいヤツなんていなかった。あれから、ずっとだ」

重なった視線。
八坂さんの瞳が、苦しそうに歪んでいた。

「あんなつまらねー意地で、とか。今考えると本当にガキすぎて笑えるけど……おまえには想像つかないくらいに後悔してる。離したくなんか、なかったのに」

握られた手に、ギュッと力がこもる。
じっと見上げていると、八坂さんはしばらく黙った。

そして……ツラそうな顔のまま、私の肩に頭を乗せる。
ポスンとした衝撃に、息が止まった。


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