クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「いや、違う違う! 俺は別に胸のサイズはどうでもいいっていうか、ほら、好きになった子の胸が好きっていう、いたって普通な感じ」
「その前に、女性を目の前に堂々と胸の話をするのはやめてください。八坂さんも」

注意すると、倉沢さんは口を尖らせ、八坂さんは他人事みたいに「はいはい」と適当に返事をする。

「とにかく、倉沢は他探せ。めぐもこいつに甘い顔するなよ」

厳重に注意してくる八坂さんに倉沢さんが「途端に彼氏面だよ」と眉間にシワを寄せていると、それまで笑っていた北岡さんが「まぁまぁ」とふたりをなだめる。

「試練だとでも思えばいいじゃないですか。あった方が燃えるでしょ?」

楽しんでいる様子の北岡さんに、八坂さんは焼き鳥を食べながら苦笑いを浮かべた。

「いやー、いらないです。試練とかあるとこいつがすぐ音をあげるんで」
「先に音を上げたのは八坂さんじゃないですか」

すぐに言い返すと、倉沢さんがキョトンとしたあと口を開く。

「っていうか、待って。え、試練って俺のこと? こんなイケメン捕まえて試練とかおかしいでしょ。そもそも、ぶっきらぼうで女の子の扱いがなっていない八坂さんより俺の方がよっぽど――」
「ぎゃんぎゃんうるせーぞ。倉沢」

八坂さんと倉沢さんが落ち着いたところで、「そういえば」と北岡さんが出した話題は広田さんや星さんのことだった。

あれからまだ数日ではあるけれど、関係は少しだけ改善に向かっている……兆しを見せているらしい。

課長に注意をされてから星さんは態度を若干改めて、広田さんにも出納機を教わるようになったという話だ。

とりあえず、悪い方向には向かっていないことに安心したところで飲み会はお開きとなった。

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