クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
ウインナーやらチーズトーストやらをパクパクと食べ進めながら言う八坂さんに、一度は眉を寄せたけれど……言い返すことはやめる。
「今まで内緒にしてましたけど……実は私、料理がそこまで得意ではなくて」
バツが悪く感じ、目を逸らしながら白状すると、八坂さんは食べる手は止めずに「知ってる」と即答した。
「え」と声をもらし隣を見ると、馬鹿にしたような笑みを返される。
「その前に、どのへんが内緒だったんだよ。高校んときからずっとめぐって料理できねーなって思ってたけど」
まさかバレているとは思わなかったから驚いていると、八坂さんが「だから」と続ける。
「めぐができないなら、俺ができるようにならねーとって、高校んとき結構料理してたから、その生活リズムが大学行ってからも就職してからも、ずっと染みついてて……たぶん、今では結構作れる」
わずかに恥ずかしそうに告げられた言葉になにも言えなくなった私の視界を、八坂さんが手で塞ぐ。
大きな手に目元から頭にかけてを押さえられたっていうのに、文句が口をつかないどころか頬が緩んでしまうのは、八坂さんの気持ちの大きさを知ったからだろうか。
「いつか、必要になると思って、料理の練習してくれてたんですね」
さすがに認めるのは癪なのか、黙ってトーストを食べる八坂さんにふふっと笑い……そっと口を開いた。
「愛してるって言われるよりも、ずっと嬉しいです」
笑いかけた私に、八坂さんは困ったような笑みをこぼし……それから「そっちもいつか言ってやる」と歯を見せ笑う。
それは、高校時代憧れるほど好きだった、八坂さんの笑顔だった。
2017.4.20
END