クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
『一度壊れたモノは、元通りには戻らない。どんなに元のカタチを望んで努力したって、ヒビはなかったことにはならない』
つけっぱなしになっていたテレビが言う。
見れば、いつの間にかニュースは終わり、ドラマが流れていた。
沈んだ表情で静かに言った淑女が、ゆっくりとこちらに視線を向ける。
ただ、カメラを見ているってだけなのに。
私に言われているような気がした。
言われなくたってわかってる。
どんなに望んだってもう、無理だってこと。
それに……私があの人に会えることなんて、もうないってことも。
「うーん。俺、女の子は可愛くて大好きなんだけど、どうしても本気になれないんだよね。だから、真面目に付き合うとかはできないけど。それでもいいなら」
――つまり、ライトな身体の関係だけだったらいいと、そういう意味だろうか。
そんな言葉を受けてうなづく女の子はどれくらいいるんだろう、と思いながら、告白劇場と化したコンビニから出た。
七月末。梅雨も明け、すっかり夏と化した空気はカラッとしている。
ただ、暑い。
毎年毎年最高気温を更新しているけれど、地球は大丈夫かな、と本気で思う。
私が高校生だったころは、もう少し暑さも緩かった気がするな……と思いながら、ふぅと息をつき、オレンジ色の混じり始めた空を眺めた。
目の前には大きな車道が広がっていて、たくさんの車が行き来している。
コンビニのなかでは、未だ告白劇場が続いているようだった。
私だったらどう返事をするかな、と考えて……空に浮かんだ人物に目を伏せる。
恋愛経験は、そのひととしかないわけじゃないのに。
こういうとき頭のなかに浮かぶのは、決まってそのひとで……そのたび、こりもせず切なく鳴く胸にキュッと唇に力を入れた。