クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
『今日っつーか……まぁ、白状すると、結構前からずっとだけど。付き合うなら、めぐがいいって思ってた。これって、そういうことだろ』
ハッキリと言い切ったあと、『おまえは?』と聞かれるまで、たぶんたっぷりと十秒はあったと思う。
緊張と混乱で、きちんとした時間間隔はなくなっていたから、自信はないけれど。
『私も……付き合うなら、八坂さんみたいなひとがいいなって思ってました』
そこからさらに、たぶん十秒後。平然を装いながら返した言葉が、震えていなかった自信もない。
八坂さんが、嬉しそうに、おかしそうに笑ったから、もしかしたら本当に震えていたのかもしれないけれど……そんなのもう、どっちでもよかった。
それからの付き合いは、順調だった……と思う。たぶん。
お互い、部活への取り組み姿勢が似ていたから、部活を優先したって文句が出ることはなかった。
部活帰り、一緒に帰れるだけで嬉しかったし、お互いに試合結果や練習内容を話していると時間が経つのはあっという間で。
帰り道だけじゃ足りずに、そのまま立ち話するのも珍しくはなかった。
テスト前、部活が休みになると、勉強会と銘打って八坂さんの部屋に行って、いつもはできないような恋人らしいこともしたりして……関係は順調だった。
八坂さんが、引退するまでは。
八坂さんがバスケ部最後の試合を終え、引退したあとも、一年後輩の私は当然、部活中心の毎日。
一方の八坂さんは、大学入試があるけれど、部活があったときよりは時間にゆとりを持って過ごしているようだった。
下校時間の違いから、一緒に帰ることが少なくなって、土日に八坂さんが遊びに誘ってくれても、部活があるからと断ることが続いた。