クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
『すみません。部活で……』
『言われると思った』
すかさず返ってきた言葉に申し訳なくなっていると、八坂さんが私の頭をガシガシとかき混ぜるようにして撫でた。
『いや、当然だろ。俺だっておまえの立場だったら同じように答えてるし、そんな顔すんな』
私を気遣ったような笑みを見て、あ……と思った。
バスケをしているときはあんなにも楽しそうに笑っていた八坂さんの笑顔が、変わってしまった気がして。
もっと言えば、部活を優先する私といるときよりも、他の女の子と一緒にいるときのほうが、楽しそうにしている気がして。
でも、それに気付いたからといって、マネージャーをしている以上、どうすることもできない。
それは、八坂さんだってわかっているハズだからと……どこかで甘えていたのかもしれない、と気付いたのは、八坂さんがもらした言葉でだった。
『俺らって、付き合ってる意味あるのか?』
部活帰り。珍しく、帰りを待っていた八坂さんの様子は、最初からおかしかった。
ずっと黙っているし、なにかを考えているようだったから。
そんななか、突然突きつけられた言葉は、耳から入り込み、身体を切り裂くようにして私のなかに落ちた。
冗談で、こんなことを言う人じゃない。本気だ。
追い詰められたような顔して私を見つめる八坂さんに、キラキラした笑顔のかけらも見つけられなかった。
……私が、消してしまった。