クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「七年も経てば、変わります」
私も、同じボリュームでそう告げてから、なにげなく公園内に視線を移して……「あ」と声がもれた。
遊具のない、見通しのいい公園。
野球グラウンド二面ほどの広さがある公園の地面は、半分が芝で半分が土。
普段、球技を楽しむ場として使われているんだろう。
バスケのコートと思われる場所に、ボールがひとつ転がっている。
両脇には、相当古そうなゴールが立っていた。
見ているだけで、軋む音が聞こえてきそうだなと思う。
「八坂さんのボールも、よくあんな風にツルツルになってましたよね」
数メートル先に転がっているボールを見ながら言うと、八坂さんは「そうだな」と言いながら歩き、近くにあるベンチにスーツと鞄を置く。
それから、片手でボールを拾い上げた。
バスケットボールが掴めてしまう、大きな手。節くれだった指。
それが街灯の白い光を受けるのを、眺める。
「バスケ、今はやってないんですか?」
「ああ。大学まではやってたけど」
八坂さんが、感触をたしかめるように両手で掴んだボールをくるくると回す。
そして、おもむろに額あたりまで持ち上げると「よっ」と小さな声をもらし、ボールを放った。
付き合っていたころ、帰り道にあった公園で何百回って見たシュート。
キレイなフォームから放たれたボールは、夜の空に弧を描き、リングにあたることなくゴールに吸い込まれた。
はぁ……と尊敬にも呆れにも近いため息を落としながら、持っていた鞄をベンチに置く。
「本当に大学までですか? 相変わらず外れる気がしませんけど」
文句を言うみたいに褒めると、八坂さんは明るく笑い、ボールを拾った。