クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「大学の話は知りません。でも、高校のとき、八坂さんは遊んでバスケしてたわけじゃない。いつだって、これ以上ないくらいに必死でした」

じっと見つめる先。
八坂さんは驚いた顔をしていた。

「それを〝遊び〟なんて言わないでください」

『バカみたいにやってたのは大学までだな。プロいけるほどじゃないのは自分でもわかってたし、就職もしなきゃだし。いつまでも遊んでいられねーなって切り替えた』

さっき、その言葉を聞いたときから引っかかっていた。
そうじゃないのにって。

八坂さんは少し黙ってから、ふっと表情を緩める。
まいった、とでも聞こえてきそうな顔だった。

「めぐは、相変わらず真面目だな」

公園に面している細い道路を、車が走っていく。
エンジン音が聞こえるなか、ふたたびシュート体勢をとった八坂さんは、ボールを放ちながら言う。

「別に、無駄だったとかマイナスに思ってるわけじゃねーよ。ただの言葉のアヤだ。俺だって、適当にやってた覚えなんて一度もない」

ポス……とわずかな音だけを立ててゴールが決まると、ボールが地面に落ち、てんてんとバウンドし、転がる。

それを眺めながら、今の八坂さんの言葉に満足し、笑みを浮かべた。

「仕事、まさか金融機関だなんて思いませんでした。細かい仕事とか、合わない気がしますし」

エンジン音が遠ざかった、静かな公園内。
等間隔で立った街灯の白い光が、心もとなく照らしていた。

「なー」と、まるで他人事みたいに言った八坂さんが、こっちに向かって歩いてきながら続ける。




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