クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「たまに作る程度だけどな。同期とか課のやつらと飲みにいくことも結構あるし。おまえは?」
「そうですね。レトルトカレーにスクランブルエッグ乗せるくらいには料理できますよ」
ウケを狙ったわけじゃなかったのに、八坂さんは楽しそうに笑い出す。
「ああ、卵焼き作りたいのにぐちゃぐちゃになる例のアレか。たまに弁当作ってこいって言うと、甘いスクランブルエッグが入ってたもんな。……え、おまえまだ卵焼きもちゃんと作れねーの?」
そういえば、何度かお弁当を作ったことがあったなぁと思う。
お互い自分で作ってきて交換しようってなったり。
そんなイベントが催されるたびに、並んだお弁当を見てひどい敗北感を味わうことになるから、数度でやめてしまったけれど。
ボールを自由に操れる手は、食材や包丁もお手の物なんだろうか……と口を尖らせる。
「カレーにはスクランブルエッグが合うんですよ。ふわふわしてておいしいです」
負け惜しみじゃない。本音だ。
なのに、八坂さんが「料理くらいできるようになっておかねーと、嫁の貰い手がねーぞ」なんて、からかうから、ふん、と鼻で笑ってやる。
「世の男性はすぐにそう言いますけどね。〝料理くらい〟って、軽く言うなら、男が料理をすればいいんですよ。男が当たり前のように料理料理って言うせいで、世の女性をどれだけ追い詰めてるのか身を持って知るべきです。生まれつき苦手な人もいるのに可哀想です。そもそも――」
「あー、俺が悪かった」
苦笑いで言う八坂さんをじろっと見てから、小言をやめ、はぁ……と息をつく。
「つーか……こういうの、懐かしいな」
楽しそうに笑みを浮かべる八坂さんに、「ですね」と目を細めた。