クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
こんなやりとりも七年ぶりだ。
それなのに、当たり前のようにできてしまうやりとりは、何度もふたりで慣らしたものだからかもしれない。
八坂さんも短気な一面はあるけれど、実際には私のほうが小さなことでカッとなりやすい。
それを、八坂さんが、あまり悪いと思っていなそうな笑顔で宥めるのがいつものことだった。
まるで、七年なんてブランクなかったみたいにしっくりくる隣に、喜べばいいのか切なくなればいいのかわからずに、胸が鳴いていた。
……私との思い出を。
八坂さんはとっくの昔に、過去の箱に閉まったんだろう。
閉まったつもりなのに、フタが上手にできなくて今もそこに留まっているのは私だけだ。
だって、七年は長すぎる。
こうして再会できて普通に話せただけでもすごく幸運だと思うのに、うっかりそれ以上を望みそうになる自分のあさましさに呆れて笑みを浮かべた。
八坂さん相手だと欲張りになるのも、七年前となにも変わっていないみたいだと思い知る。
「私、ちょっと寄るところがあるので、ここで失礼します」
なんとなく、これ以上一緒にいるのは胸がざわついて、そう切り出す。
駅前で足を止めると、八坂さんも立ち止まり眉を寄せた。
「こんな時間にか? 危ないし、俺も付き合う」
「いえ。大丈夫です。少し買い物して帰るだけですから」
ハッキリと断った私を見て、八坂さんは不満そうに口をへの字にするから笑ってしまった。