クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「私、もうこどもじゃないんですよ。買い物くらいひとりでできます」
「こどもじゃないから、別の心配が出てくるんだろ」
ぴしゃりと言われ、思わず声が詰まりそうになった。
本当に心配してくれているのがわかったから。
でも……と、小さな期待を膨らませる胸を抑えつけた。
「だったら、尚更大丈夫です。見てのとおり、棒みたいなもんですし」
謙遜するつもりで凹凸のない身体を言うと、八坂さんは「でも、棒みたいなのが好きなマニアがいるかもしれねーし」と難しい顔をして言うから、ボディーに一発入れてやる。
予想していなかったのか「んぐ……っ」と鈍い声をもらした八坂さんは、お腹に手をあてた。
効いたらしい。
「お疲れ様でした。明日からもよろしくお願いします」
まだお腹をさすっている八坂さんに頭を下げてから、背中を向けた。
「気をつけろよ。お疲れ」
うしろから追いかけてきた声に振り向くと、若干目元をしかめながら微笑む八坂さんの姿がある。
ガサツそうに見えて心配性の過保護も、昔のままか……。
そう思うと、胸がじくりと痛み、重苦しい霧が身体中をおおった。
買い物なんて口実だ。
実際には、必要としているものなんてない。
それでも、八坂さんが電車に乗るまでは時間をつぶさないと……と思い、コンビニ立ち寄ることにした。
昨日もきた場所だ。