クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
そういえば、このコンビニの店員に告白されてたひとの名前はなんだっけ。
今日、全員の紹介は受けたけれど、歓迎会に参加してくれたひと以外はもう曖昧だ。
たしか、〝倉〟がついた気がする。
コンビニ内、パックジュースを持ちレジに出しながら〝倉……〟と、頭のなかで、名字を考えていると。
突然、レジにいた店員がカウンターに身を乗り出した。
驚きながら視線を移すと、見覚えのある女の子が興奮した様子で私を見ていた。
「あのっ、昨日、見てた方ですよね?!」
言われて、あ……と思い出す。
「……告白現場なら」
「ですよね! ちょっと聞いて欲しいことがあるんですけど!」
語尾にいちいちビックリマークをつけて元気よく話してくるのは、昨日、告白していた女の子だ。
「あ、私、井村っていいます」と胸元の名札を指さし、自己紹介を済ませたあと、井村さんが話し出す。
「とりあえず、信じられなくないですか?! 私、結構可愛いって言われる方なのに、あんな風にあしらうなんて……どんだけ面食いなんだって話ですよ。
そこに並んでるグラビア雑誌に出てる人と比べたって、ひけをとらないレベルだと思うんですけど!」
声のボリュームが気になって、きょろきょろと店内を見る。
どうやらお客は私だけのようで、安心する。
「えっと……井村さん、でしたっけ。たしかに、可愛いですよね。とても」
「でしょ?! 可愛い可愛い言われて育ってきたんですもん! 勘違いしてるイタイ女とか思われたくないですけど、これは事実ですし」
発言だけ聞いたら、たしかに〝お世辞を本気にとって勘違いしてるイタイ女〟と思ってしまいそうだけど、実際、井村さんは可愛い。
本人の言うように、芸能人と見比べてもひけをとらないし、華がある。