クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「さっきの……軽い恋愛しかできないとかそういう話。そうなのかなっていうのは、私もあとから気づきましたけど……でも、そんなこと言われたら、余計にこじ開けたくなるじゃないですか」
「こじ開けたく……?」
「軽い恋愛しかできないなんて、きっと過去になにかしらの大事件があったに決まってます! だったら、トラウマだかなんだか知らないけど、その理由を調べて、そして知ったあと、自分だけは特別になりたくなるのが、人の性ってもんです!」
ぐっと顔を上げて言う井村さんを見て、ガッツがあるな……と感心してしまう。
自分に自信があるのに振られたりしたら、プライドだとかも傷ついただろうし、傷ついたなら、それを深手にしたくないって考えそうなものなのに。
井村さんは可愛いから、なんとなくすぐ次の恋愛にいきそうなイメージを持ってしまっていたけど……どうやら違ったらしい。
それにしても、あんなこと言われたのに、まだ倉沢さんをどうにかしようとするなんてすごいな……。
尊敬にも近い感情を抱いていると、井村さんが続ける。
「それに、私可愛いから、近くにいたらそのうちほだされる可能性もあるし」
「……なるほど」
「好きになってから、何度か待ち伏せして話しかけたりしてたから、そろそろいいかなーと思って告白したのに……時期を見誤りました」
ガッカリした顔で言う井村さんに、そろそろお会計してもらえないかと思う。
カウンター上に放置されたパックのフルーツジュースは、汗をかき始めていた。