クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~



「ねぇ。この〝エラー02〟って今日二度目だけど、引っ掛かりやすい紙幣がこの出納機のなかにあるからってこと?」
「その可能性もありますね。あまりに続くようなら、一度なかを覗いてみてもいいかもしれません。
私は、あまりに続くようなら見るようにしていますけど、二度ならまだ様子見かなって感じです」

隣に立ち出納機を見ながら説明すると、広田さんは自分の顎を指先で触り「ふぅん」と返事をする。
まだなにか疑問が残っていそうなトーンだ。

待っていると、予想通り広田さんが聞いてくる。

「これって、入出金のとき、内部で細いベルトに乗せて紙幣を移動させてるのよね? 長期間使ってそのベルトが消耗したりして、たとえば表面がツルツルになって紙幣が滑るようになったら、エラーも出やすくなるの?」

「なりますね。ただ、その辺はうちでも調査していて、二年であれば、どれだけ酷使しても問題はないという結果が出ています。
なので、二年で一度部品交換に来る予定でいますが、例えば紙幣になにかしらの付着物があって、それが第一段階で機械の外にはじき出されずにそのまま機内に入ってしまった場合、その付着物がベルトを傷つけるケースも――」

コーチし始めて五日目の、月曜日。
広田さんは、相変わらず定時上がりだ。

でも、時間内はとても熱心で、その姿勢は北岡さんの言っていた通りだなぁと感心する。
態度が偉そうだとか、上から目線っていうのは噂通りだけど、私の方が年下だし気にならないから問題はない。



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