クールな彼の甘い融点～とろけるほど愛されて～

仕事には関係ないとは言っても、広田さんは役員の娘だ。

そうなると注意しにくい部分もあるだろうし、注意してもあの態度で返されたら、気の弱そうな吉川課長の胃にはダイレクトに響きそうだ。

それに、他の女性職員に注意するのは……もっと気を遣いそうだ。

吉川課長の救いって、北岡さんくらいなんじゃないだろうか。
可哀想だなぁ……と思いながら、眉を下げ微笑む。

女性が固まっている課の課長なんて、相当大変そうだ。

「色んな事情があるのはわかりますから、気にしないでください。それに、広田さん、覚えいいですし。北岡さんへのコーチも、時間外とか関係なしに楽しくさせてもらってますから」

にこりと笑うと、吉川課長は少し安心したように表情を緩め「申し訳ない。お願いします」と頭を下げた。