クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「八坂さん、顔は怖いですけど、懐くと結構可愛いと思いますよ。単純だし、大型犬みたいで」
楕円形になったストローをくわえながら言うと、倉沢さんは完全な苦笑いを浮かべて私を見た。
「それは……ちょっと想像できないな」
「八坂さんが私に構うのは、ただ懐かしがってるだけで、意味なんてないですよ。八坂さんが高校卒業してからは、一度も連絡とったことなかったですし、先週、七年ぶりの再会を果たしたんですから。
つまり、それくらいの仲ってことです」
急にそんなことを言い出したからなのか。
それとも、遠回しに聞こうとしていることを、聞く前から言われたからなのか。
倉沢さんが驚いた顔をするから、にこりと笑いかける。
「やたらと気にしているようだったので、牽制です。探られるのって、好きじゃないので」
笑みを浮かべたままじっと見ていると……その先で、倉沢さんが「まいった」とくしゃりと笑った。
「ごめんごめん。八坂さんが構うって珍しいからつい探り入れてた。まぁ、あの人は決まった人がいるみたいだから、瀬名ちゃんと恋愛関係なんじゃないかとか疑ったわけじゃないんだけど。ほら、八坂さんも男だし。手出したのかなって」
笑いながら言う倉沢さんに「決まった人って……」と思わずもらすと、すぐに答えが返ってくる。
「直接会ったわけじゃないんだけど、八坂さんってそういう口ぶりするから。
去年だったかな。女の子との飲み会に無理やり誘ったんだけどさ、帰りが遅くなったから送ってほしいって言う女の子を渋々送っていったことがあったんだよ」
会わなかった時間は七年だ。
その間、色んな女の子と色んなことがあったのは当たり前なのに……自分勝手な胸がチクリと痛んだ。