クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「仕方ないんじゃないでしょうか。私もそうですし」
「俺、ちゃんと好きだって言わないで付き合い始めただろ? で、数ヶ月経ってから初めて好きだって言って、めぐも好きだって返してくれたときのこと、覚えてるか?」

空気の流れがバッサリと切られたみたいに、時間が止まった気がした。

『俺、付き合うならおまえみたいなタイプがいい』

高校一年の九月。八坂さんのそんな言葉から付き合い出した。

その数ヶ月後……たしか、クリスマス目前の、イルミネーションが綺麗な季節。部活帰りに、少しだけ寄り道をして、クリスマスツリーを見に行った。

駅から少し離れた場所にある、大きな公園のクリスマスツリーは、たくさんの電飾に彩られ堂々と輝いていた。
空の星がかすむくらいに。

カップルでにぎわっているそこで、ふたりで並んで見ていたら、不意にキスされたから、すぐに肘打ちした。
だって、人前だ。

いくら自分たちの世界に浸っているカップルしかいないとはいえ、人前でキスするなんて信じられない。

だから、顔を真っ赤にして何度も抗議の肘打ちを入れていると、八坂さんは『悪かったって』と、楽しそうに笑って……それから、笑顔のまま白い息で言った。

『たぶん俺、人生で今が一番幸せな気がする』

バスケも順調で、期末試験も終わったから、そういう意味も込めてだってことはわかった。
だとしても、それは呆れてしまうような言葉で、実際私は呆れてしまって、気付けば笑っていた。


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