クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
『俺らって、付き合ってる意味あるのか?』
部活帰り。暗くなった空の下。言われた言葉に、頭のなかが真っ白になった。
『八坂さんがそう思うなら……別れたほうがいいのかもしれないです』
――でも、私は嫌です。
『なら。そうするか』
伝えたかった気持ちをさえぎった言葉に、今度は目の前も頭のなかも、真っ黒に染まった。
八坂さんに別れを意識させたのはきっと、私のせいだ。
仕方なかったとはいえ、常に部活を優先させていたから。
逆の立場だったとして、私だってきっと八坂さんに言ったかもしれない。
〝こんなの、付き合ってるって言えますか?〟って。
だから、八坂さんは悪くない。
悪くないのに……。
ぷつりと、びっくりするくらい簡単に切られてしまった関係に、〝捨てられた〟という思いが浮かんで消えなかった。
私を家まで送り届けたあと、『じゃあな』と、静かなトーンで言い、背中を向けた八坂さん。
それから少しして、未だ真っ暗な世界に耐えきれなくなり手に取った携帯。
八坂さんにかけた電話は、繋がることはなかった。
プルルルル……と繰り返される音をどこか遠くに聞きながら、涙が溢れた。
――ああ。八坂さんは、本当に私がいらなくなっちゃったんだ。
そう思ったら、わけがわからなくなって、こんな世界嘘だとさえ思って。
自分でもひくくらいに泣いた。