クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


『なぁ。おまえ、今、付き合ってるヤツとかいんの?』

あのあと、八坂さんがなにを言うつもりだったのかはわからない。

だけど……その先に、なにかを期待している自分に気付いたら、怖くなった。

八坂さんには彼女がいるのに、それでも口をついてしまいそうになるから、それが怖かった。

――私は。私はまだ、八坂さんが好きだから。

離れている七年間にもうっすらと思っていたそれに、再会して気付いてしまった。

好きだなんて……気付いたところで、もうどうしょうもないのに。
じくじくと痛む胸に、誰かを想うということを、思い出した。

胸の奥底。

〝過去〟という箱に収まりきらなくて持て余していた気持ちが、溢れ出した気がした。


一週間ちょっといて、気付いたことがある。

この支店の一部は、飲み会が好きすぎる。

毎日のように誘われるから、おかしいなとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。

今日も仕事終わりに北岡さんにいつものように声をかけられ、さすがに連日断っているしなぁ……と承諾し、向かった居酒屋。

そこには、営業のひとが数人いて、すでにできあがってしまってる人も見受けられた。
どうやら、独身の営業はほぼ毎日誰かしらが飲んでいるらしい。

北岡さんいわく、時間も愚痴もあるから仕方ないのよってことだった。

成績が数字になって毎月出されてしまうんだから、そりゃあストレスも溜まるんだろう。
日々、決まったことを淡々とこなせばいいわけじゃないんだから。



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