クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「北岡さんは毎日出席してるんですか?」
右隣に座る北岡さんに聞く。
「んー、気分さえ乗れば。私、ひとり暮らしだし、どうせ家帰ってもひとりでご飯食べなきゃでしょう? だったら、食事だけ一緒に済ませて早々に帰ったほうが楽しいしなって感じです。
まぁ、多少食費はかさみますけど、どっちみち自炊とかできないんで」
明るく笑われ、ああ、なんとなくわかるなぁと思った。
部屋に帰りながら、夕飯なににしようとか考えるのも面倒だし、作るなんていったらもっと面倒だ。
だったら、職場からの流れで夕飯まで済ませて帰ったほうが楽かもしれない。
「営業の人の出席率は高いんですか?」
見る限り、八坂さんと倉沢さんを含めて、営業のひとは五人いる。
営業課の半数以上が参加していた。
「多かったり少なかったりですかね。いつも出席の人もひとりふたりはいますけど、八坂さんとかは、久しぶりですし。月に二、三回しかこないからレアですよ」
「へぇ。わいわいするの好きなのに珍しい」
左隣をチラッと見ると、八坂さんがとんかつをくわえながら答える。
「賑やかなのは嫌いじゃねーけど、酒が入ったあとの実のない会話みたいなのが好きじゃないんだよ。だから、気が向かねーと行かない」
「そうなんですか」
高校のころはギャアギャア騒いでたけど……でも、それは部員とか友達ととかだ。
職場の人とってなると、また違うんだろう。
「俺は好きだから、結構参加率高いよー。あんまり酒強くはないんだけどね」
向かいの席から割り込んできたのは、倉沢さんだ。
いつも高いテンションが、より高いように感じる。
見れば、二杯目の中ジョッキが終わろうとしていた。
「ほら、女の子と飲むと気使うから。その点、先輩たちとなら思う存分飲めるから楽だしね」
「そういえば瀬名さん、おもしろい話があるんですよ」
倉沢さんが言い終わると同時に、パッと表情を明るくした北岡さんが話し始める。