クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「先週ね、違う居酒屋で飲んでたら、たまたま倉沢さんが遊んだ女の子と鉢合わせちゃって。
その子、かなり酔ってたから、倉沢さんの胸倉つかんでグラングラン揺らしながら〝遊びでいいって言ったけど、本当に遊ぶなんてひどいっ〟って泣きだしちゃって」

揃えた指先で口元を隠し、ぷぷっと笑う北岡さんに、倉沢さんが慌てた様子で言う。

「あれは違うんですよ。だって、お互い納得の上だったのに、あとになってから急に、やっぱり遊びじゃ嫌だとか言い出して……。
卑怯じゃないですか? 俺は遊びでいいって言うから付き合ったのに」

「見抜けなかった倉沢さんが悪いでしょ。その子、もとは遊びで関係持てるようなタイプじゃなかったんじゃない? そのときは、好きだから一時でもいいってなったけど、終わってみたらやっぱり一時じゃ嫌ってなったんでしょ」

北岡さんがバシッと言うと倉沢さんは、う……っと痛いところをつかれたように眉を寄せてからぶつぶつ言う。

「でも、俺はちゃんと遊びって言った上でしたんだし。それでもいいっていう、相手の言葉信じるじゃないですか。
これっきりって言ったハズなのに、電話とかメールとかすげーしてくるし、無視してたら顔合わせちゃうし、首ガクンガクンさせられるし。悪いのはあっちでしょ」

うーん……と眉を寄せる。

倉沢さんの恋愛の仕方はとりあえず置いておいて。
本当にそういうことで話がついていたなら、ルール違反は女の子のほうだ。

でも、好きで好きでどうしょうもなくて、一度でいいからって関係を持ったあと、やっぱりそれじゃ嫌だってなった女の子の気持ちもわかる。

どっちにも事情があって難しいな、と考えていると「瀬名ちゃんは、今まで何人くらいと付き合ったの?」と話題を振られる。



< 70 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop