クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「先週ね、違う居酒屋で飲んでたら、たまたま倉沢さんが遊んだ女の子と鉢合わせちゃって。
その子、かなり酔ってたから、倉沢さんの胸倉つかんでグラングラン揺らしながら〝遊びでいいって言ったけど、本当に遊ぶなんてひどいっ〟って泣きだしちゃって」
揃えた指先で口元を隠し、ぷぷっと笑う北岡さんに、倉沢さんが慌てた様子で言う。
「あれは違うんですよ。だって、お互い納得の上だったのに、あとになってから急に、やっぱり遊びじゃ嫌だとか言い出して……。
卑怯じゃないですか? 俺は遊びでいいって言うから付き合ったのに」
「見抜けなかった倉沢さんが悪いでしょ。その子、もとは遊びで関係持てるようなタイプじゃなかったんじゃない? そのときは、好きだから一時でもいいってなったけど、終わってみたらやっぱり一時じゃ嫌ってなったんでしょ」
北岡さんがバシッと言うと倉沢さんは、う……っと痛いところをつかれたように眉を寄せてからぶつぶつ言う。
「でも、俺はちゃんと遊びって言った上でしたんだし。それでもいいっていう、相手の言葉信じるじゃないですか。
これっきりって言ったハズなのに、電話とかメールとかすげーしてくるし、無視してたら顔合わせちゃうし、首ガクンガクンさせられるし。悪いのはあっちでしょ」
うーん……と眉を寄せる。
倉沢さんの恋愛の仕方はとりあえず置いておいて。
本当にそういうことで話がついていたなら、ルール違反は女の子のほうだ。
でも、好きで好きでどうしょうもなくて、一度でいいからって関係を持ったあと、やっぱりそれじゃ嫌だってなった女の子の気持ちもわかる。
どっちにも事情があって難しいな、と考えていると「瀬名ちゃんは、今まで何人くらいと付き合ったの?」と話題を振られる。