クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「うるせーな。話題戻すな」
「俺はただ心配してるんですよ。八坂さんのそういう部分を」

口を尖らせる倉沢さんに、八坂さんは面倒くさそうに目を細めた。

「言っただろ。そういう女嫌いなんだよ。だいたい、もっと慎ましくあるべきだろ。酒が入ったからって迫ってくるとか冷める」
「出た。八坂さんの偏見。慎ましくてもビッチでも、据え膳ならもらっとかないと女の子が可哀想でしょ。まったく。見た目、がっつり肉食っぽいのに」

八坂さんは、目つきも悪いし、身体つきもガッシリしている。
たしかに獰猛って感じがするから、見た目から判断すれば完全に肉食だ。

逆に、倉沢さんは見た目からして優男って感じだし、草食に見える。
実際の話は置いておいて。

「言われてみれば、八坂さんの女の噂聞いたことないかも。高校のころから、淡泊でした?」

北岡さんが、八坂さんではなく私を見て聞くからギクリとする。

「ほら、仲良かったって話だったから。八坂さんは聞いたところでどうせ答えないでしょうし」

言葉通りで、深い意味はないんだろう。
ビクっと動揺した心臓を落ち着かせながら、苦笑いを浮かべた。

「どうでしたかね。八坂さんが言いたくないことだったら、私もあまり言えませんけど……淡泊って感じではなかったかと」

八坂さんは単純で、よくいえば素直だから、なんでも口にも態度にも出す人だ。

それでも、やきもちとかそういう感情は素直に表に出すことに抵抗があったのか、少し溜め込んでいたみたいだった。

たぶん、カッコ悪いみたいに思ってたんだと思う。
やきもちを焼いていたんだってことが判明したあと、八坂さんはいつも『悪かったな』って不貞腐れたような顔して目を逸らしたから。


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