クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


『めぐは俺のモンだって、言って』

そんな言葉を願われたことが何度かあったなぁと思い出す。

付き合っていた頃。私は、知らず知らずのうちに、八坂さんを追い詰めていたのかもしれない。
八坂さんに、そんなことを言わせてしまうほどに。

離れて、八坂さんとのことを思い出すたびにそう思う。

八坂さんの表情、声、言葉、眼差し。全部が、もっと私を望んでくれているっていう、サインだったのかもしれないって。

もっとも、そんなことに気付いたのは、離れてからだけど。

だって、誰も思わない。あんなにバスケが上手くて、なにもしなくても周りにはいつも人が集まってしまうような人気者の八坂さんが、そんなに私だけに固執しているなんて。

当時は、想像もできなかった。

だから……別れっていう、結末になったのかもしれない。

ウーロン茶を眺めているうちに、じょじょに沈んでいく気持ち。
それを止めるように、八坂さんが「俺のことはどうでもいいだろ」と吐き捨てるように言った。

「今は、倉沢の適当さをどうにかしろって話なんだから」

機嫌悪そうに眉を寄せた八坂さんに、北岡さんも口をそろえる。

「そうよねー。さすがにあんなの見ちゃうとね。おもしろかったけど、いつまで学生気分でいるのって感じもするし、下手に恨まれでもしたら大変かもね。倉沢さんって、もとからそんな感じ? ずっとゆるいの?」

三人の視線を受けた倉沢さんは、左上を見ながら「んんー」と呟く。
頭を悩ませているようだった。


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