クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「特定の子と深く付き合ったことないからわかんないけど、そうかもしれないですね。俺のこと好きだって言ってくれて顔がタイプならまぁいっかって。
逆に、俺が嫌だって思うことを平気でし始めたら俺から気持ちが離れて行ってるってことだし、それ感じた途端、どうでもよくなる感じです。頭にくる前に興味が失せる」
ビールをゴクゴクと飲みほした北岡さんが、店員さんを呼び、デザートを注文する。
「杏仁豆腐ひとつ。瀬名さんはなにか頼みます?」
「あ、じゃあ、白玉あんみつお願いします」
ふたりぶんのデザートの注文を受けた店員さんが出ていく。
「倉沢さんが嫌なことって具体的になに?」
北岡さんがそう聞いたのは、さっき『俺が嫌だって思うことを平気でし始めたら』なんて言ってたからだろう。
私も気になっていたから黙って待っていると、倉沢さんはビールを飲んだあと答える。
「わざと他の男といるとこを見せつけてくるとか。俺、他の男の気配がする女ってダメなんですよ。男友達とかと遊んでたなんて聞くと、すぐ嫌になっちゃう。
それを分かった上で、俺のこと好きだって言うのに、俺が嫌がることする女の心理がわかんないし」
あれ……とわずかな引っ掛かりを感じた。
女の子に執着してないみたいなのに、独占欲みたいなのはあるのかなって矛盾を感じて。
独占欲っていうよりも、潔癖症とかそんなだろうか。
疑問に思っていると、隣で八坂さんが言う。
「それ、倉沢がちっとも本気にならないから、わざと他の男といるとこ見せつけてるだけなんじゃねーの。そういうことする女もいるんだろ? こないだ週刊漫画雑誌見てたら、わざと元彼に会って主人公の気持ち揺らしてるヤツがいてイラッときた」
運ばれてきたデザートがテーブルに置かれる。
枝豆を食べながら「少年漫画なんだから、恋愛系載せるの本当にやめてくんねーかな」と、別のことで腹を立てる八坂さんに、倉沢さんがハハッと笑った。