クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「漫画は俺も同感ですけど。俺の気引くためだとかの話は、だとしても、どうでもいいですね。寂しいからとか、不安だったからとか、そんなテメーのための感情で俺の嫌がることしてる時点で、冷める」
お酒のせいなのか、いつもよりも若干口が悪い倉沢さんを注意する気にはならなかった。
あまり女の子をいい加減に扱うのはよくないとはもちろん思う。
いくら倉沢さんのスタイルがあるんだとしても、相手が可哀想だ。
でも……話を聞いているうちに、倉沢さんがなんだか小さな子供みたいに思えてしまって、思わず笑みがこぼれていた。
「つまり倉沢さんは、相手の女性に、誰よりも……もっと言えば、女性自身よりも倉沢さんを大事にして欲しいって望んでるんですよね。こどもみたいに」
白玉を食べながら言うと、隣で、杏仁豆腐を食べる北岡さんが「みたいですね。私もそう感じました」と笑みを浮かべる。
ニヤニヤとした表情で見られた倉沢さんはと言えば、形のいい目をぱちくりさせていた。
戸惑っているみたいだった。
「えー……いや、そんな風に考えたことなかったけど……でも、たしかにそうかも」
自分自身、まだ納得のいかない様子で言う倉沢さんを見て、八坂さんも口の端を吊り上げる。
「なんだよ、倉沢。おまえ結構ガキだったんだな。抱いた女の人数がすげーから騙されてた」
私のあんみつから、白玉をひとつつまみながらの八坂さんの言葉に、北岡さんが「えっ」と楽しそうな声で反応をする。
反応したのは『抱いた女の人数がすげー』の部分だろう。
私も「へぇ。そんなにすごいんですか?」と続くと、倉沢さんは慌てた様子で笑みを浮かべた。