クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
倉沢さんの指摘どおりだった。
『そういう女嫌いなんだよ。だいたい、もっと慎ましくあるべきだろ。酒が入ったからって迫ってくるとか冷める』
私は、再会するまで、八坂さんとお酒を飲んだことはない。
付き合っていたときは、高校生だったし。
だから、八坂さんのなかにいる〝お酒が入ったからって迫らない、慎ましい誰か〟は、私じゃない。
八坂さんの言葉の端には、倉沢さんのいうようにたしかに誰かの影があって……それが、ショックだった。
黙っていると、倉沢さんが続ける。
「この間の飲み会で、八坂さんが瀬名ちゃんのお皿から白玉をひとつ摘んだときとか、嬉しそうにしてたよね。その前にドリンクオーダーするとき、八坂さんが自分のと一緒に、なにも言ってないのに瀬名ちゃんのウーロン茶頼んだときも、口の端が緩んでた」
これも、身に覚えはあった。
たしかに、嬉しかった。
昔みたいに私のお皿からひとくち摘むことも。私のアルコールの量を気にして、二杯目はウーロン茶を頼んでくれたことも。
だけど、それが顔に出てたなんて……不覚だ。
カッと顔が赤くなったのが、自分でもわかる。
「私をボロボロにして楽しいですか?」
全部バレていたことが恥ずかしくて、居たたまれなくなってうつむくと、倉沢さんが「まさか」と笑った。