Daisy
…相手は俺より弱いはずだ…

なのに、さっきの雑魚どものせいで本来の力は出し切れていない。

「…クソ!!この卑怯者が!!」

「…卑怯で結構、それが俺のウリでもあるからね!」

虎太郎はこちらの神経を逆撫でするような嫌な笑顔を浮かべる。

「…にしても、つまらないなぁ。
君との喧嘩、そろそろ飽きてきたな。」

「…卑怯なことしといて言えることか?」

その会話の間にも喧嘩は、体力を温存していた虎太郎の優勢が続く。


「…別に、あきることとかんけいないじゃないかな?」

そう返す虎太郎は、屁理屈の上手い奴だ。

虎太郎はひとことずつに俺をイラつかせてくる。


「…話にならん。…黙れ。」

虎太郎の手が急に止まり、俺も仕方なく手を止める。

「…うわ、冷たいな…昔の玲弥君は俺が疲れちゃうまで遊んでくれたのにね?」

「…どういう意味だ。
それに、今の俺は昔とは違う。」

「…昔の玲弥君はここで俺を殴り飛ばしてるとこだけど…ほんと、君はつまらない人になってしまったね。」

「…お前がおかしいだけだ。
…それに、飽きたなら早く決着をつければいい。」

「…は?…アハハ!
今度は正論までぶち込んで来るって…」

「…正しいことを言って何がおかしい。」

「…そうだなぁ、君の言うとうりだよ。
…飽きたなら、決着をつけてしまえばいいんだ…」

その時、虎太郎の目の色が変わり、俺の腹に大きなパンチが飛んできた。

「…グッ!お前、本気じゃなかったんだな?」

「…アハハハ!…そうだよ!…ってか、こんなボロボロなのに本気出したら可哀想だしなぁー…俺って優しいから?」

虎太郎は俺に向かって、いかにも嫌味なことばかりを言ってやがる。

「…ボロボロにさせたのはどこのどいつだってんだ!!この卑怯者が!」

「…はっ!…口だけは相変わらず元気だね…自分のお腹、見てみなよ?」

怒りできづかなかったが虎太郎の手には血のついたナイフが握られていた…

「…な、それは…」

案の定、俺の腹は血が出ていて、痛みも半端じゃない。

「…アハハハ!…やっと気づいたの?
…君の負けだ。」

やばい、これじゃ動けない…

虎太郎の勝ち誇ったような笑い声がして
彼はナイフを持ち直すと…

俺の方に歩み寄った。

(…俺は、死ぬ、のか…?)

痛みでもうろうとする意識の中で、春馬のことが頭に浮かぶ。


「…ごめん、春馬…。」


(…また、俺はおまえを守れない…)

とどめをさされると思い、虎太郎を睨みつけ…俺は

「…この、クソ野郎が、」

と、言い放った…
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