Daisy
翌日、まだパーカーは乾いていなかったのでとりあえず昨日の水浸し事件の先輩を探し出して、昨日の件の謝罪とパーカーのお礼をいうつもりだ。
いつも学校には8時頃につくから、朝礼の8時40分までは教室で読書をして時間を潰す。
学校について上履きに履き替えてから、寝ぼけ眼のまま職員室で鍵を借りて二階の教室に向かう。
私のクラスは2年4組、頭はそこそこの普通科クラスで、みんないい人だからとても楽しく過ごしている。
教室についた私は鍵を開けて教室のドアを開くと、顔をしかめた。
なぜなら、教室のこもった熱気が一気に押し寄せてきて暑かったのがさらに暑くなったからだ。
「…うわぁー。あっつ」
足早に自分の席に向かい、自分の机に着くと荷物を置いて教室のあらゆる窓を開けていく、最後には廊下の窓を開けて窓開けを終える。
暑いのにはさほど変わりはないが、蒸し蒸しのサウナ状態よりは断然ましだ。
「…ふう、これでよし。」
少しだけ涼しくなった教室に風鈴の音が響く。
満足した私は自分の席について本を出して読みかけのページを開く。
私の席は窓側で丁度日差しが当たらないように木で影ができている。おかげで日焼け止めもいらなくて助かる。
「…あ!おはよう!今日も読書?」
はっと声の主の方を振り向く。
その人はやはり笹倉くんだった。
近頃は私と話そうと朝早くに現れて私の読書をおしゃべりで邪魔してくる。
少し加減してほしいものだ。
「…うん、そうだけどさぁ、どうして最近早いわけ?いつもは普通じゃん。」
笹倉くんは私を落とそうとしてるのだろうが、私はわかってる…
騙されないぞ!
と心の中で思いつつ彼の矛盾をつこうと試みる。
「…いやぁ、小鳥遊さんを見習って早く登校してみようかなと思ってね!」
笹倉くんは何も動じることなく返事をしてきた…手ごわいやつだ。
そして結局は彼のおしゃべりに付き合わされるという始末だ。
彼が性格が悪かったならまだよかった。
笹倉くんとは友だちでいたいから私は彼を突き放せばいいのか、それとも愛想よくすればいいのかわからなくなる。
そんなこんなで今に至るわけである。
そして8時25分ほどで凛が現れて笹倉くんからやっとの事で解放される。
最近初めて気づいたことには、明らかに落とそうとしてくる相手に対してはとても神経を使うことだ。
笹倉くんは私にキザったるい言葉ばかりを言ってくるし、私は彼に好きを見せないように常に気を張っている事になるんだからとてもつかれるのだからたまったもんじゃない。
これだけでへばってしまう私だけど、
男からモテる凛はいつもこのような思いをしているのかと思うとすごく大変だろうなあと思った。
まぁ本人はとっくの昔になれてしまったようで、今はさほど気にしていない様子だけど。
「ハル!おはよ!!」
凛が席について元気よく挨拶をする。
「おはよ!助かったよ…」
私の発言に凛がキョトンとする。
「…?どういう意味?ってか笹倉くんと楽しそうだったじゃん!」
凛はそう言って私の方に身を乗り出す。
「…そうかな…私は疲れた。っていうよりも私はゆっくりと本が読みたいのに…笹倉くんはどうでもいいことばっか話してくるんだもん。
今日の朝にニュースがどうたらこうたらって…ニュースはあたしも見てるし。」
私は笹倉くんに聞こえないほどの声で凛に彼に対する苦情を暴露する。
そんな私を見て凛はくすくすと笑った。
「…笹倉くんはどうにかしてハルと共通の話しようとしたんだろうけど…」
よくわからないけど、嬉しそうにニヤニヤする凛に少しうなだれる。
「…いやぁ、ないない。
それに、凛はニヤニヤしてるけどさ、これのどこがおもしろいの?」
私は怪訝なかおで、ケラケラと楽しそうに笑う凛に自分を指さしていう。
そして次の話題にうつり、私は心の中で
明日からはいつより遅く来るようにしようと考えた。
彼から話しかけてくる好意は嬉しいけれど、疲れてしまうし本も読めない。
「…いや、ハルはおもしろいよ!」
私はまだからかってくる凛にうんざりしつつ小さくためいきをついたのだった。
そして午前中の授業を終えた私達は昼ごはんをいつもの中庭に食べに行く。
私は今日もいつものように普通どおり過ごしている。
昨日の水浸し事件のことをりに話すととっても笑われてしまった。
「…もおーなんだよぉ、そんな笑わなくてもいいじゃんか!」
私はムスッとして凛にいう。
凛は相変わらずくすくすと笑っている。
「そういえば、思い当たるクラスがあるんだけど…このあと行ってみる?」
凛はこの学校の人はもちろん、ありとあらゆる情報を持ってるからいつも驚かされる。
「…え、そうなの!?何組!?」
私は凛の方へ身を乗り出して聞き直す。
まさかこんなにも早く見つかるなんて思わなかった。
「それは後でのお楽しみ!
さ、早く食べないとあの先輩に会う時間が無くなるよ!」
凛はそう言って笑顔で誤魔化した。
時計を見ると1時15分で、昼休みが終わるまではあと30分だった。
私は大急ぎで残りの昼ごはんを口にかき込む。
「頑張ってー!」
凛は既に食べ終わって横で笑っている。
それから5分後、すべて食べ終えた私は凛と三年生のいる3階へと向かった。
まだまだ騒がしい廊下の人をかき分けて向かった先は,
「…ここって…。」
凛は隣でニヤニヤ、どうりで私に組を教えてくれなかったわけだ。
「…多分ここだよ! ハルの探してた先輩」
そこはうちの学校くらいにしかない特別クラス、3年7組だった。
それは種類は一切問わずにただずば抜けた才能がある人のみが存在するクラスなのだ。
そろそろと中を見てみれば、白衣をきていて教室にもかかわらず実験してる人、ひたすらルービックキューブをひたすらカチャカチャしてる人(すごく色が揃うのが早い)、
筋トレしてる人に、ゲームしてる人などとたくさんの人が自由な事をして過ごしている。
さすがの凛もこれには驚いたようで、私と一緒に唖然としていた。
「…すごいね。この人達。」
それだけしか言えないくらいに異様な空気間に押されて戸惑ってしまう。
二人して固まっていると、ルービックキューブをしていた金髪の先輩が私立ちに気づいて向かってくる。
「…そんな所で固まってどうしたの?
誰にご用事かな?」金髪の先輩は最初のイメージとは違う明るく人懐っこい笑顔でそう言った。
私は一番普通っぽい人でよかった、と心の中で安堵した。
「…あの、なまえはわからないんですが、昨日灰色のパーカーを着ていた人ってこのクラスですか?」
金髪の先輩は私の話を聞いて少し驚く。
「…ほぉ、あいつに女の子のお客様とはね…。」先輩はニヤニヤと笑いながらこちらの顔を見てくる。
この金髪先輩があいつと呼ぶということはあの先輩はこのクラスだろう。
「ここまで来てもらってすまないねー。
とりあえずこのクラスだからまた今度きてみなよ!」
そう言って今度は明るく笑顔を浮かべる金髪先輩。
「はい、ありがとうございます!」
私は金髪先輩に微笑んでお礼を言った。
「いつもどっかで寝てっから探し用もねえからなぁ、俺から君たちの事は伝えとくよ! 」
金髪先輩は見かけによらずいい人だったようでよかった。
あの実験をしている人だったらどうしようかと思っていた。
そして予鈴がなって金髪先輩とは別れて教室に戻る。