― BLUE ―

「おいブス」


振り返ると、さっきまで寝ていたはずの杉本が左手で頬杖をついてこっちを見ていた。


「な、なっっ!!」


ブスと言われたことよりも、覗き見してたことへの罪悪感から焦って頭が回らないぃ。


「うっとーしい」


すると杉本は顔色ひとつ変えずにそう言って、視線を外さない。

だけど、"うっとーしい"ってなに? あたしなんかしたっけ? 覗いてただけだけど…って、あぁ…それか。


「…あ、ごめん……、勝手に覗いたりして」


ようやくあたしの頭と口が連動して動きはじめた。だけどきっと顔の筋肉がおかしいぐらい引きつってたと思う。


「先生がいなくてっ!!カーテン閉まってるし!? な、中の人に事情を聞こうかとっ?? なんか体調悪いのに起こしてごめん!!」


焦って噛みそうになりながら必死で口を開いたのにも関わらず、杉本は相変わらず愛想もクソもない涼しい顔。だけど、あたしから目線を外さない。


「え、ええっと」


もう戻ってもいいよね。謝ったんだし。


「じゃ———、教室に戻るからっ」


なんだか気まずい。あたしの心臓に毛が生えてない限りこの場所に居続けるのは無理。

それどころか空気が薄くなってるかのように頭までクラクラしてきた。


「あんたさぁ。それ、うざくない?」

「へ……? あたし?」


が、なに? 突然のことだったから何を言ってるのかわからない。かなり素っ頓狂な声を出していたと思う。


「前髪」

「ま、まえがみ?」

「なんか面倒くせ。やっぱいい」


え。


杉本はあたしに背を向けて、再び横になってしまった。。


「早く行けよ」

「!!?」


な、何様のつもり!?

喋りかけてきたの、そっちじゃん!!


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