― BLUE ―
「なあ、辻ぃ? おまえの2分て驚異的な長さだよな」
本物だ。
杉本だ。
「——どうして?」
だけど杉本はあたしの問いかけには答えず。携帯をわたしの手に戻してくる。杉本の体温が指先から伝わってくるのがわかった。
「おまえ手ぇ冷たすぎ」
「奈美ちゃんは?」
少し気まずそうに片眉を上げながら笑った杉本。
「タクシーのおじさんに預けてきた」
「………」
杉本の肩にも、たくさん雪が積もっている。
「あのさ辻。こんな誰もいない道歩くときは、携帯で話してる振りでもしながら歩けよ」
「……びっくりした」
それぐらいしか言葉が出てこない。
これはあたしのボキャブラリーのなさが原因なのか、それともこの状態をあらわすのにこの言葉しか存在しなかったのか。
目の前にいる杉本が、やっぱりまだ信じられない。
「あ〜〜……、けど家庭教師クビになるかなー。誰かさんのせいで」
あんなにべったりまとわりついてた奈美を振り払って、無理矢理タクシーに押し込めてる杉本を想像したら少し笑うことが出来る。
「やっと笑った」
頭をぽんッと叩き、どこか懐っこく笑う杉本。
胸が締め付けられるような気がした。