― BLUE ―
2.新しい風

◇◇◇◇◇


あのあと、すぐ先生が戻ってきた。

あれこれあって顔色も悪かったのだろうと思う。すぐに早退の許可がでた。ラッキーだ。すっかり胃の調子がよくなった。

だけどこれって単に不登校の兆しなのではないだろうか……。あたし大丈夫?

——で。
いま何をしてるかと言うと。
鏡の前に立ってる。

鏡の前でおでこ全開にしてみたり? 指で髪の毛を挟んでは前髪が短く見える位置で止めてみたり?

前髪が中途半端に伸びているわけではないからね。つまり目にかかるとか、そういう状態ではない。だからうざくはないと思う。おでこは出ているし。……でもうざいのか。


「ううむ………」


湿気で膨張しているせいで野暮ったく見えたのかな。ピンで留めればスッキリな感じにも見えるし。


「マコ〜〜?? もう帰って来てるのーー??」


パートから帰ってきた母の声が玄関から聞こえてきた。

あたしの靴が玄関にあるのを見て、きっと不思議に思っているのだろう。


「どうしようかな」


でもま、切ろうと思っていたところだし。
あいつに言われたから切るとかじゃないし。

あとー…他には、ええっと。

あ、そうそう!
早く帰ってきたしっ!!
早退だけどっ!


「こらマコ!帰ってるんだったら返事ぐらいしなさい!」


母がひょこっと顔を出した。


「あーごめん。調子悪かったからね。じゃあ美容院行ってくるねー」

「美容院? 病院? ……こらマコ!!!」


母の声を背中で受けながら、なんだかんだとたくさんの理由をこじつけ美容院へ急いで向かった。

仕上がりはなかなか悪くないって感じで、あたし的には大満足な仕上がり。本当は前髪ぱっつんにも挑戦してみたかったけれど、猫毛のあたしがあれをやってもガタガタになるだけだ。なので猫毛を生かした軽い感じに仕上げてもらった。

気のせいかどうかわからないけど、なくなってしまった髪の毛と一緒に心も少し軽くなったような気がする単純なあたし。足取りも軽い。

なーんだ。

こんなことなら、さっさと切ればよかったかな。

鼻歌を歌いながらご機嫌に帰宅したのはいうまでもない。

母が私を見て呆れた顔をしてたけれど、そんなの関係ないっ!

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