― BLUE ―

次の日は雨。
雨が降っていると屋上には行けない。


「ね、千草。まだ降ってる?」


窓際の席に座る千草の元へ歩み寄った。


「うーーん。もう止みそうなんだけどね」


大嫌いだった雨も、杉本と親しくなるきっかけだったと思えば嫌いじゃなくなっていた。屋上にいけないのが、やっぱり少し残念ではあるけれど。

学校へ着くなり千草と佳代にライブの件を伝えたら、千草は河口に「楽しんできてください」と嫌味たっぷりの敬語で話していた。

杉本にも伝えたいんだけれどな。
だけどわざわざ伝えるほどのことでもないかもしれないので、LINEやメールで報告することでもないと思える。

それにじつは今日、あたしの誕生日だったりするし、なんかちょっと連絡しにくい。

杉本には言うタイミングもなかった自分の誕生日。だけどよく考えれば、あたしも杉本の誕生日を知らなかった。

自分の誕生日に杉本の誕生日を知らないことに気付くという。


「あ、今日さ? カラオケでいいよね?」

「うん。ありがとね」


今日は千草と佳代と美耶の3人が誕生パーティーをしてくれるそうだ。

日付が変わったとき、咲からは"おめでとう"のメールが来た。


あたしを取り巻く環境が変わっていく。
去年の誕生日は振られた直後で、誕生日どころじゃなかったことを思い出した。


あれから一年…。
もう一年も経つんだね。



そして放課後、携帯が短く鳴った。


「……」


通知画面に表示される名前。
急いでロックを外し確認してみれば絵文字もなにもない実にシンプルな短い文章が目に入る。

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