― BLUE ―

《誕生日おめでとう》


わー。これって初メールだ。
たったそれだけの短いメールだったけれど記念すべき第一号がこれ。迷わず保護メールに設定。


あれ?
だけど、どうして?
なんで知ってるのだろう。

携帯を忙しなく操作して杉本のアドレスを繰り出し発信。


『もしもし』

「辻だけど」

『わかってるよ』

「いまメール見た。ありがとね?ってか誕生日…知ってたんだ?」

『知ってたって言うか、おまえのメアドが誕生日じゃねえの?』


確かに自分の生年月日の数字が入っている。
だけどメールアドレス交換したことすら忘れていたよ。なのに気付いてくれたんだ。


「……ありがとぉ」

『どーいたしまして』


杉本はときどきこうやって普通にさらりとあたしを驚かせてくれる。


「雨降ってるね」

『おー、知ってる』


雨が降ってると会えないふたり。そんなどこかちょっとロマンティックなことが頭をかすめた。


「明日は晴れるといいね」

『そうだな』


だけど本当は明日じゃなくて、いま…。いますごく杉本に会いたくなっていた。

あたしやっぱり、


「…———コ? マコーーーッ!?」


背後からあたしの名を呼ぶ千草の声が聞こえる。


「あ、電話中だし。ごめん」


そういって千草は顔の前で手をパンっと合せ、ニコニコ笑った。

勢いに任せ、いまにも走り出してしまいそうだった気持ちが沈んでいくのがわかる。杉本のもとへ駆け寄るより、きちんと話すほうが先だ。


「じゃあ、切るね」


電話は、あたしの方から切った。

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