― BLUE ―
すっかり調子が戻ったあたしは、次の日普通に登校。いまは湿っぽい女だけれど元は単純なのだ。
「あ、マコおはよ〜!誰かわかんなかった!いいじゃーん。それ似合ってるよ!」
「ほんと!? うれしす!」
下駄箱で会った同中の子に声を掛けられ、新しい髪型を褒められる。ふわふわした気分。
髪切ってよかったっ!
だけど忘れていたよ。
教室の前で思わず足が止まる。
認めたくはないけれど、杉本に会うまではなんだか緊張しているあたしがいた。
だって杉本のあの一言で、あたしが髪を切ったとか思われたら相当いやだし。
そんなんじゃないし。たぶん。
「なにしてんのマコ? 入んないの?」
「いや入るよっ!!?」
「あはは、なにそれ」
入口で美耶に声を掛けられた勢いのまま足を一歩踏み出す。そして教室に入ると、すぐに杉本と目が合った。
だけど杉本のほうが先にさらりと視線をそらせてしまう。偶然目が合っただけなのだろうけれど、あたしも少し遅れて目をそらせた。
びっくり………。
べつになにかを期待してたわけじゃない。
気付いて欲しかったわけじゃない。
親しく話しかけるような関係でもない。
それに杉本とは会話が成り立たない。
だけど、保健室で会ってから——…。それとも下駄箱で水をかけられたときから??
うーん…。そういうのではないか。
まあとにかく、このジメっとした高校生活に、さらりと新しい風が入ってきた、気がする。
なんか悪くない。そんな感じ。