― BLUE ―

********


それから雨の日が続き、杉本は屋上に現れることもなく。
そのままライブの日になった。


あたしが中学の頃から好きなアーティスト。
いまみたいに人気がないころから気に入っていたアーティストのライブ。だから今日はこのモヤモヤした空や気分も全て吹き飛すつもり。

きっと楽しめる。
そう思った。

待ち合わせをして電車に揺られつつ、何駅も遠い場所まで運ばれてきた。

開場まではそうでもなかったのに、中に入ればたくさんのひとが熱気に溢れていて、カウントダウンのときとはまたちがう空気に圧倒される。なんだか不思議な空間だ。隣にいる河口と何度も緊張するねと顔を合わせた。

そわそわ落ち着かない。学校の外で会う河口と一緒なのもあるのだけれど、はじまるまでとにかく落ち着かなくて高鳴る胸を押さえつつ何度も深呼吸を繰り返した。

すっと暗転すれば熱気が一気に爆発し会場も揺れる。びりびりと体を振動させる音。頭の先から足の先までサウンドの中に取り込まれてしまったかのようだ。

はじめての感覚に戸惑いつつ、だけど何曲か終えると落ち着きを取り戻してくる。

< 121 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop