― BLUE ―

見慣れない風景。
隣の河口を見てそう思った。


「あ……」


この曲。一番好きな曲。
杉本の着音設定になっている歌。

なんとなく出会ったころからの杉本とのことを思い出してしまう。ロック画面の写真を撮るときインカメに写るあたしたちが妙にくすぐったく見えた日もあった。どっちがスマホを持つか、離れすぎくっつきすぎと楽しそうなふたりが画面に写っていて。

そしてバラード系の曲が始まり、しっとりとした切なげな歌声が流れるはじめる。

なんだかな…。
こんな気持ちを友達に聞いてもらえないのが、だんだんひとりぼっちな気がして無性に寂しくなってくる。

こっそり息を吐き出せば、それを敏感に気付いた河口が顔を覗き込んで来た。


「この歌、好き?」

「…うん。まあまあ」


このライブが終わったら、やっぱり千草に全てを話そう。全部聞いてもらおう。

アンコールの曲が流れる中、心にそう決める。




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