― BLUE ―

「俺、さあ…。もう、わかってると思うから言うけれど………」


そこまで言うと河口は急に笑顔になり、真っ白で形のいい前歯が覗く。


「マコのこと好きなんだよねえ」

「あー…、うん。ごめん、ありがとう。あたし好きな人がいる」


それはあまりにもすんなりと口から出てくる。自分でも少し驚いた。


「だと思った」

「え?」

「見てたらわかるよ?」


え。


「誰かまではわかんないけど」

「ああ……」

「うまくいくといいな」

「……」


なんかごめんなさい。
それからありがとう。

口に出したいけれど、こんなの自己満足なのかも。
ただ気持ちの整理をして楽になりたいだけなのかも。

たくさんの想いが一気に込みあげてきて視界が滲んでしまう。

だけどこんなところで泣いたらダメだ。
何度も唾を飲み込み必死で堪えた。


「フラれたの俺なのに、なんでマコが泣くんだよ」

「——ごめ」

「応援してるから俺」

「……っ」


駄目だ止まらない。
なにやっているんだろ。
このままでは河口に迷惑を掛けてしまうじゃん。

ぐっと息をのみ、空を見上げた。
何度か深呼吸をする。

< 124 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop