― BLUE ―
「——泣いちゃってごめん」
「気まずくなるのだけはやめような」
「うん」
自分の想いを相手に伝えることの難しさを、あたしはいま身をもって知っている。だからこそ河口が眩しくて仕方がない。
「てかさ、じつは昨日、千草と話したんだよね。だからいまごろ首を長くして待ってると思う」
そうなんだ。
千草そういうのいわないから。
「あたしも千草に話したいことがある」
「千草かー。千草なー」
「河口のおかげだよ。今日は一生忘れられない日になると思う」
「あいつもマコに好きな人いるの気づいてると思うよー」
え。
「"あんたフラれる"っていわれたから」
気づいている?
千草が?
どこまで?
だけどそんな素振りは一度も見せたことがない。好きな人がいるかどうかも聞かれたことがない。
「だから覚悟を決めてたかな。いったことに後悔はしてないしスッキリした」
そして河口は「じゃ。また明日学校でな」と胸元で控えめにガッツポーズをしたあと、キュッと口を結び小さく頷いた。あたしは何度も頷き返す。
「バイバイ」
「ありがと河口…っ!」
「じゃあなー。あ、好きな奴にフラれたら俺のとこ来いよ。なんつって!!」
駅に向かう河口の後ろ姿。
その姿が見えなくなるまで見送った。
——よし
鞄から携帯を取り出す。
電源を切っていたので、それが立ち上がるまで気が焦って何度もボタンを押してしまった。
履歴の中から千草の名を選び、圏外じゃないことを確認してから発信。息を吐きだす。
全部話そう。