― BLUE ―
そしてあたしたちは、たびたび保健室で顔を合わすことになる。
それは待ち合わせをしている訳ではなくて、そうだな、なんていえばいいのかな。
“たまたま”
うん。この言葉。
これが1番しっくりくる。
あたしひとりのときも勿論あるし、杉本がいたとしても親しく言葉を交わす訳ではない。というか喋らない日がほとんどだ。
いま胃薬をもらいに来たついで。そのままぼんやりと保健室にある、興味もない本をペラペラめくっている。杉本は単にサボっているようで、なにかの雑誌を見ているようだ。
保健室が特に居心地がいいわけでもないんだけれど、教室に比べると幾分過ごしやすいのかも。
「ほら2人とも。もう教室に戻りなさいチャイム鳴ったでしょ」
さすがに保健室の先生にもいい顔をされない。
だけどあたしたちは模範的な生徒でないにしても反抗的な態度をするような生徒でもない。
「はい」
杉本はスルりと保健室を出て行った。
「ほら、辻さんも」
「はーい」
とくに追い掛ける訳でもなく、杉本の少し離れた後ろを歩く。
季節は夏のはじまり。
初夏———
どこかのクラスが体育の授業中のようで、グラウンドから生徒の歓声と笛の音が聴こえた。
太陽の光が校舎の窓から惜しみなく注ぎこんでいる。前を歩く杉本の夏服、真っ白なシャツに反射していた。
キラキラ眩しく輝いて、思わず目を細める。
おかしいな。
杉本が輝いて見える。
まるで光を放っているかのよう。
ま、反射してるだけだけど。
視線を落として耳を澄ませてみれば、あたしと杉本の足音だけが響く廊下。
リズムをそっと杉本に合わせてみる。
ふふ。