― BLUE ―

「おい!」


足を止めることなく、もつれて駆け足になりそうなぐらい早足で歩く。


「ちょ、辻!ちょっと待てよ!!」


追いかけてきた杉本に後ろから肩を掴まれ、無理やり身体ごとクルリと方向を変えられた。

両肩に乗っている杉本の手が、キツく肩を掴んで痛い。


「痛いよ」

「あ、ごめん」


気づかぬうちに下唇をかみ締めていた。
落ち着いて冷静になろうと思えば、また怒ってるのか泣きそうなのかわからないような感情が一気に湧き上がってきてしまう。


「…り」

「は?」

「もう無理なの…。これまで通りになんか出来ない」

「なに言ってんの?」


杉本が呆気に取られているのが見てわかる。
そしてあたしの目をじっと覗き込んだ。


「だから………こういうこと…止めよう——て言うか、もう止めたい」


だって好きだから。
でも杉本は違うんだもん。

肩を掴んでいた杉本の手の力がふと緩んだ。
あたしはそれを承諾のサインと受け止めて、くるりと杉本に背を向けて再び歩き出す。


「……ぃっく」


歩き出してしばらくすると、涙がとめどなく出てきた。

だけどこれでいい。
これでいいんだ。

これ以上、一緒にいても、きっと辛いだけだもん。

だからこれでいい。

一度も杉本を振り返ることなく、ただひたすら前を睨んで歩き続けた。

しばらくすると道ゆく人がチラリとあたしを見ては、見てはいけないものでもみてしまったかのように視線を逸らせ通り過ぎて行くのがわかる。


「……」


ああ、そっか。
いまあたし、すごい顔して歩いてるんだ。


「…ズズッ」


ようやく頭が冷静になってくる。
急いで顔を拭いて鼻をかんだ。

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