― BLUE ―
「意味わかるよね?」
「いつ」
「さっきの休み時間!」
「ど、うして…?」
「——っ!!そんなの…そんなのっ!!あたしに聞いたって、わかるわけないじゃないっ!!!!!」
一気に喋った千草は下唇を少し噛み締めながらあたしを睨みつけ、ぷいっと頭をそっぽへ向けた。
「ね、マコ…」
様子を見兼ねた佳代が千草の代わりに口を開く。
「あの、わたしさ…? 事情はよくわからないんだけど——…杉本くんは何も言ってなかったよ…——ね、千草?」
そんな佳代の言葉に小さく唸った千草。
そして盛大な息を吐き出し、こっちを向いた。
「……ね、マコさ。よく考えなさいよ? あたしらの教室に、今までシンが来たことなんてあった?」
「ない」
「あんたを…、マコを探しに来たんじゃないの?」
ふーっと一息ついた千草は、更に続ける。
「あたしがさ? 喋りかけに行ったの。いつもは“えーっと、ごめん…誰だっけ?”とか言うんだよ…同中なのに」
そこで一旦言葉を止め、あたしを睨んでくる。
どう答えればいいのかわからなくて、ただ千草の言葉を待った。
「今日あいつさ、何て言ったと思う?」
答えを促してくるので、わからないと少し頭を横に振った。
「はじめて名前呼ばれた。"あー千草ちゃん"って……。これまであたし、名前なんか呼ばれたことなんてなかったのに………意味わかる?」
「ごめん……。わからない」
「あんた本当さ、ちょっとバカじゃない!?」
千草はまた顔を背けてしまう。
隣に座っている佳代へ視線を移せば首をすくめて頭を横に振った。