― BLUE ―
額や首から汗が流れてるのも構わず、文字通り形振り構わない状態。
そこで少し深呼吸。
だけどすぐに収ってくれそうにもない。
すっと息を吸い込み、まだ乱れたままの息を止めドアへ手をかけた。
「……」
鍵は開いている。
杉本の姿も見えた。
一歩ずつ足を踏み出すたび、やっぱり引き戻そうかという気分になってしまう。
「よぅ」
「……」
汗を流して必死に走ってきたあたしが、妙に浮いているのがわかった。
杉本は涼しげな表情でいつもの場所に座り、まるで今朝の出来事が嘘のようだ。なにもなかったかのように、いつもの挨拶をする。
「——あのさ杉本」
「ん?」
教室まで来たと千草がいっていたけれど、それってあたしを探しにきたんじゃないのかも。
「何だよ?」
もお知らない。
「すごい好きなんだけど」
「……は?」
杉本は頭の上にハテナマークがいくつも浮かんだような顔になっている。
無理もない。
だってあたしの声は甘い声でも、テレた感じでも緊張したふうでもなく棒読み。