― BLUE ―
10.真実の扉
◇◇◇◇◇◇
あたしのポケットには、ふたたび屋上の鍵が忍んでいる。
あれからは、また気まぐれに屋上で会っていた。
杉本に告白したからといって、なにかが激変することはなく。
あえて変化を探すと約束をするようになったこと。これまでのように"たまたま"ではない。
約束をして一緒に帰ったり、朝は自転車でマンションの下までむかえに来てくれることがあったり。休日なんかも待ち合わせをして出かけることもあった。いわゆるデート?
「——あの、ちょっといいですか?」
あ、変わったことあった。
こんなふうに知らない人から話しかけられることがすごく増えた。同級生や下級生、それからたまに上級生からも。
「杉本先輩と付き合っているんですか?」
「あー…、たぶん」
登下校を一緒にすることが増えてからというものの視線が痛い。
杉本はいつもこんな視線を浴びながら生活しているんだろうかと思えるほど、あちこちから視線が飛んでくるようになった。
ひょっとすると杉本が屋上や保健室に足を向けるのは、こういう視線から逃れるためなのかもしれない。
「たぶんってなに」
「あ、杉本おはよー」
「たぶんなわけ?」
背後から突然杉本が話に入ってきたものだから下級生があたふたと顔を赤くした。
ほんとモテるのね杉本って。
これも改めて実感。