― BLUE ―
「さ、いくぞー」
すると、お兄さんの声。
そろそろバスが到着するそうだ。
そしてあたしたちは今日泊まる予定の民宿へ向かった。
「民宿なんだね〜? てかあたしテントかと思ってた」
「——まじかよ。お前ってなんかさ、かーなーり、ノー天気だよな。テキトーというか」
そして頭をポンっと叩く杉本。
「えぇっ!?」
「そこ驚くとこじゃないって」
そう言いながら笑う杉本は最近思っていることをよく口にするようになった気がする。さっきのこともそうだけど。
「はじめて言われたかも…」
「みんな騙されてんだろー? でもちゃんと俺にはわかるもんね」
あ。
いま"俺にはわかる"って。
なんか嬉しいな。
民宿の部屋割りは杉本とはべつだ。
だけど大部屋で、女性陣はふたつに分かれる。
「なんか奈美ぃ、ちょっとつまんないな〜」
それぞれの部屋へ入ると奈美の開口一番がこれ。
くすりと笑いながら、それを恵さんが嗜める。
「だってね? マコ先輩って〜〜〜、なんか超鈍いし」
「——なっ」
なんですと?
「こらこら奈美ちゃん」
笑顔で奈美と言葉を交わす恵さん。
よくよく見ればスタイルは見惚れるほどに素敵だし、見た感じもあたしとは違ってカッコイイ大人の女性って感じがする。奈美も恵さんの言葉には素直に従った。