― BLUE ―
「ね、杉本。屋上行かない?」
単なる思い付きで、唐突にそう言ってみた。杉本は表情を変えはしなかったけれど、ほんの少し驚いた様子であたしを見ている。
「——は?」
「行こう!!」
あんなに間近で杉本と眼をあわせたのは初めてだったので、自分でもちょっとビックリな行動。
口は悪くて態度も性格も悪い、どこか近寄りがたい杉本。だけど間近で見た杉本の眼は、ふつうに綺麗だった。
無理矢理に近い形で腕をつかみ、振り返ることなく。あたしの足は屋上へ向かっている。
「あんたなんか、すげーな」
少し楽しげな杉本の声を背中に受け、足取りは更に軽くなってしまった。
だけど屋上の鍵は閉まってる。
「——あれ?」
「鍵開けるからソコどいて」
どこから入手したのか屋上の鍵を持っている杉本。
「あ、そうか。鍵って閉まってるんだったね」
「……」
「なに?」
「べつに」
あたしは屋上の鍵を杉本が持っている事について問いただすつもりも、責めるつもりもなかった。そりゃ全く気にならいってわけじゃないけれど。とくに不思議に思うこともなかった。
だけどそんなあたしに杉本は小さく笑い「どこか変ってる」といった。